【個展】何にも見えない!? 野村和弘「ドット・ペインティング」@HARMAS GALLERY

ホワイトキューブ

清澄白河のギャラリー巡りをしていて、HARMAS GALLERY(アルマスギャラリー)に立ち寄りました。外から見ていると営業しているようですが、作品が見当たりません。

 

・・・と思ったら白い小作品が2つだけ展示されていますね。
白いギャラリーの壁に白い作品が展示されているという不思議な感じです。改装中か何か?と勘違いしてしまいます。

何だろう・・・?と思って近づいていくと、絵肌が少し見えてくるようです。

むむ?と思い注意深く見ていきます。

拡大写真:ブツブツとした点が見えます。

目を凝らしてみると、肉眼では見えなかったものが徐々に見え始めます。

超拡大写真〜赤・緑・黄色・オレンジ色が見えますね。

これこそがドットペインティング。拡大しても均等に色が整列していますね。凄い技術力です。何が描かれているか?とギャラリーのご主人に聞いてやっと理解出来ました。下記の作家さんのテキストをご覧頂ければお分かりになるかと思います。

 

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野村和弘
ドット・ペインティング

このシリーズの作品すべてに同一の図像が描かれていて、それは赤76個、黒84個、黄87個、オレンジ112個、緑262個、総数621個のごく小さな色点(1mも離れれば、背景にかき消されて見えなくなる)によって構成されている。また、それらの色点は、離れすぎず、かつくっ付いて見えない程度の、格子点上に展開される(タブロー形式の作品のドット・ピッチは、2.5mm)。

その図像のモチーフは、1本のまっすぐ上に伸びた茎から、左右3本づつ計6本に分かれた円弧状にしなった枝の先に、トマト、オレンジ、レモンの実2つづつ(茎を挟んで、左右ともに、上、中、下と一種類づつ3つの実、向かって右側上からレモン、オレンジ、トマト、同じく左側トマト、オレンジ、レモン)が、たわわに実った植物である。
このモチーフの原型は、ドイツ・デュッセルドルフ市下町、集合住宅の出窓に発見された。アジア出だろう。上の図像に、茶色の植木鉢を加え、枝からぶら下がった実を一種類にして(少なくとも、トマト、オレンジ、レモン、リンゴだけの鉢植えが存在した)、シンメトリー度をさらに上げることからイメージされる、キッチュな、それでいて祭事色も隠せない、塩化ビニル製の自立したオブジェ(約30cm)。

下地レベルの作品を前にして、この図像の上下、左右いずれかの半分が選ばれる(上半分、下半分、左半分、右半分かの4つの選択肢。選ぶ基準については、気分によって、と言うしかないだろう)。選ばれなかった半分では、トマトを構成する点は赤、というように、オレンジ、レモンもその固有色、オレンジ、黄を使用。ゆえに、茎、枝は緑。しかし、選ばれた半分では、その固有色の支配から解放され、マーブル状の色点の配置(たとえば、トマトの、赤であるべき色点の位置に、黒、黄、オレンジ、緑の色点が混入するというように)も、その都度、任意に決定して進められる。
中の見えない箱に手を入れて、カラーボールを取り出す場合(ただし、一度出されたボールは戻さない)と同じく、総数が決まっていて、色の種類も、それらが含まれる割合も変化しないという条件下で、運任せに。もし、左半分が選ばれたなら、いつも赤42個、黒32個、黄33個、オレンジ42個、緑121個の色点が、点の置かれる位置は維持されたままに、その中でランダムに配置される(確率的には、同じ作品、色点すべてが同じく位置した、が現れるとは、言いがたいだろう。それぞれのタイトル?名前?には、通し番号が与えられている)。

下段に並んだ数字は、この画面上に存在する色点の総数を、それを示すに必要な色点の数も合わせて、色別に表示したもの。これは、半分の法則が適用されず、すべての作品において同一である。
実の中に見えるアルファベットは、それぞのイニシャル、トマトーT、オレンジーO、レモンーZ(=Zitrone、ドイツ語)。選ばれなかった半分では、黒の色点が当てられた。

野村和弘

〜HARMAS GALLERYホームページより引用〜

 

 

エヴァは何回リンゴを食べる?

この、白い下地が施されたキャンバスに、5色のドットで描かれたタブロー形式の作品、のみならず、ドローイング形式(紙、及びトレーシング・ペーパーの上に)、壁画形式(壁面に、ダイレクトに)と、ドット・ペインティングの作品には、1989年に始められた当初、「Wie oft isst Eva den Apfel?」(ドイツ語。日本語では、上の表題と同じ)が、そのタイトルに加えられていた。
まず「Wie oft isst Eva den Apfel?」、続いて通し番号。ちなみに、赤、緑下地の作品も、それぞれ8点、1点づつ作られている(赤い下地では、当然として、赤の色点は見えなくなってしまう)。タブロー、ドローイング形式は、260×195mm(前者は、×30mm)、壁画形式は、1310×990mm(ドット・ピッチ、10mm)。合わせて500点作ることが、目標とされた。

私の場合、他にも女性に関する作品の多くあることが、指摘されそうだ(確かに、リカちゃん人形やスカート、片方の、イヤリングと女性靴を使ったり、また女性の名前がタイトルの作品、男性の名前を女性名に変換したもの、女性のバストを扱った作品などが存在している )。それでも、女性を特別に崇拝しているから、というわけでもないのだろう。私の性別は男性であり、そういう意味では、隔てられた存在、他者ということの言い換えなのかも知れない(他のどんなものを持ってくれば、適当だったのか?また、もう一つ指摘しておくなら、私のインスタレーション作品に臨んで、もっと若い作家のイメージ、つまり年齢の、また加えて性別と国籍の、不詳性に言及されることが何度となくあった。私も、驚かされたことに)。ゆえに、実際の女性ということでもなく、そうした存在への憧れの中に働いてきたはずなのである(私を女性崇拝者と呼ぶとすれば、その女性へと身を変えることこそが、焦燥とされた、と言いえるに違いない)。
たとえ私の中にあったものだとしても、それに初めて対面する時、ゆえにそれはまだ私の知らないものでしかなく、他者との遭遇としてしか捉えられないのではないか?何か、奇妙なものが現れた。少なくとも、私から来た、などとは決して思えない(すぐにそう思えるのなら、それは他者ではないはずだ。演出された、既知の?)。他者とは、外からしか、それもいきなりとしてしか、登場できないものなのではないのか?漁に出た船に、トビウオが飛び込んでくる、あるいは出会い頭の交通事故のように。

そのリンゴと、冠詞がついていることは、あのエデンでの知恵の実そのもの、を当然指し示すとしても(エヴァが出てくる以上、どうしてもだろう)、楽園からの追放、つまり人間のおかれた状況の大きな変化というように、人間の生き方自体の変革という事柄にまで言及させるということ、そのリンゴを食べるという行為が、今までの変革全体を網羅し、代表させるということをも可能にしてくれるはずである。エヴァは何回リンゴを食べる?これから、も?これは、未来への、挑戦する言葉にも他ならない。また、それをまだ締めてはいないということの確認でも?そして、そのリンゴを食べるのは、他者たる女性、エヴァでなければならなかった(彼女となれば、初めてそのリンゴを食べることができる)。エヴァは、その変革をもたらせる人間の集合名となる。

その他者は、人を片輪へと誘う。

野村和弘

〜HARMAS GALLERYホームページより引用〜

芸術としての次元とレベルがかなり高くてすぐには理解出来ませんでしたが、色んな作品に出会うのが現代アートの楽しみですね。

概要

野村和弘「ドット ペインティング」
会期 2018年7月14日~8月4日、2018年9月7日~9月29日
会場 HARMAS GALLERY
住所 東京都江東区清澄2-4-7
電話 03-3642-5660
開館時間 12:00~19:00
休館日 月曜日、火曜日、水曜日、木曜日
観覧料 無料