【個展】下田ひかり(Hikari Shimoda)「死と再生のカタストロフィ」@朝日美術館

下田ひかりさんの個展「死と再生のカタストロフィ」にお伺いしてきました。

朝日美術館

個展の会場は東京から離れた場所、長野県の朝日村にある美術館「朝日美術館」です。
3連休の中日、東京新宿から高速バスにゆられて4時間(通常時の運行は3時間20分)で松本に着き、そこから電車で10数分、最寄りの駅からさらに20分ほど車に乗って到着するアクセスルートです。伺った当日は下田ひかりさんご本人によるギャラリートーク開催日に重なり、最寄り駅からの無料送迎が行われていました。スタッフさんのご配慮に感謝!

今回の個展はふらっと観に行くような場所ではない美術館での開催となりましたが、朝日村で開催するのは下田ひかりさんが今も住む場所だと言うことが大きな理由です。

 

Entrance 〜入場

朝日美術館の館内は土足禁止。スリッパに履き替えて入場します。ホワイトキューブの美術館と言うよりも、公民館のような趣を感じる温かみのある会場です。

入場すると立体のフィギュアが出迎えてくれます。

「Children of This Planet」

なんとなく見覚えのあるフィギュアだなぁ・・・、と思って過去の投稿を振り返ってみたらやっぱり!下記の記事で取り上げた「1分で完売したフィギュア」ではないですか!

欲しかった作品が目の前にある現実に最初は驚きましたが、存在感があり完成度が高く仕上がっていることを確認し、自分の中に改めて物欲が燃え上がる感情を確認しました。やっぱり欲しい・・・。

下田ひかり「死と再生のカタストロフィ」

今回の個展で展示されている絵画作品は2009年から2018年最新作までの全部で37点。初期の作品はアクリルガッシュ、2011年以降は全て油彩を使った作品ラインアップです。

左:「この星の子供23」(2014年)右:「この星の子供24」(2014年)

左「この星の子供25」(2014年)右:「この星の子供30」(2015年)

左「この星の子供28」(2015年)右:「この星の子供31」(2015年)

神様の行方

下田ひかりさんの代表シリーズに「神様の行方」という作品があります。今回の個展ではその中から9点が展示されていました。なお、本展の作家さん所属作品は一部で、コレクターさんたちのご協力があってこのように多くの作品が集まったと言うことです。

震災後の2012年から制作されている「神様の行方」作品は、「チェルノブイリネックレス」を取り入れている絵画作品で、「まだ見ぬ現実、不安の予感」をテーマにしています。

ネックレス状に刻まれた手術痕をキラキラとした希望の光のように描いているのが特徴的ですが、間近で見ると綺麗な輝きが繊細で眩しくて、それが無表情の瞳に接続しているようで、子供たちの未来を想像してしまいます。作品全体から強いエネルギーのようなものが発せられるように感じました。

神様の行方0(ゼロ)(2014年)

左:神様の行方6(2013年)右:神様の行方1(2012年)

左:神様の行方14(2014年)右:神様の行方15(2014年)

左:神様の行方22(2015年)右:神様の行方16(2014年)

左:神様の行方24(2016年)右:神様の行方21(2015年)

展示作品

 

左:ひみつ(2009年) 右:戦争ごっこ(2009年)

左:Self-portrait3(2009年) 右:Self-portrait1(2009年)

簡単な悲しみ(2010年)

キャラクターのお葬式(2010年)

左:ロンリーヒーロー2(2011年) 右:ロンリーヒーロー(2011年)

誰が魔法少女を救うのか?(2011年)

きっと私たちは何も知らない(2012年)

宇宙なんて知らない(2013年)

人類滅亡の叙情詩 We can not redo(2014年)

終演のレクイエム(2015年)

自分の命を戦え(2017年)

死と再生のカタストロフィ

最も大きな作品で個展タイトルにも冠されている「死と再生のカタストロフィ」は美術館の一番映えるホール中央に展示されていました。

死と再生のカタストロフィ(2018年)

デジタルの時代を意識して「レイヤー」を重ねていくことに意識を働かせた作品です。一見PCを使ったデジタル作品のように描かれた作品ですが、時間をかけて沢山のオブジェクトを配置しながら完成したフィジカルな作品です。

新聞紙の断片も重ねてあることが分かります。

キャンバスの表面に残る質感を大切にしていらっしゃるようで、作品ごとに近距離でそれを楽しめるのも原画を直接見ることのメリットでしょう。

小さな可愛いシールと下田さんのサイン。

レイヤーは、絵の具を重ねていくことの他にも意味が含まれており、現実にある明と暗を重ねていることとも繋がっています。一元的なモノの見方ではなく、様々な要素の積み重ねが現実社会を構成していることの意味を放っているようです。

ギャラリートーク

お伺いした日に開催していた「ギャラリートーク」ではご自身の略歴や現代アート事情、作品解説などが淀みなく進行していきました。

イラスト制作から現代アートの世界で活動することになった当時の話しから、来場者の質問まで、丁寧にお話しをされていたのが印象的でした。

地元の高齢者や子供、遠方から足を運んだ若い女性やミドル層まで、幅広い来場者層が物語るように、作品に共感する世代の広さが印象的でした。

制作されている作品に対するコメントは下田ひかりさん作品全てに通じる本質的なメッセージです。
普遍的な社会が抱える問題をモチーフにしています。
漫画的な作品のアプローチの上に伝えたいメッセージを含めた方が、よりシリアスな方向に伝わって行くと思っています。
左右の目の色が異なったり、ツノを生やした顔の描写、無表情のキャラクターなど特徴的で他にない描き方です。

まとめ

色々な話しが飛び交う中で、「日本人であること」や「漫画やアニメに影響されたこと」を武器と言うよりも「前提」として受け止めているようなお話しが印象的でした。

ご自身の環境やスキルを受け止めながら、抗うことなく現代社会と併走し、ご自身の目で感じ取る「自然体」な姿勢があるからこそ、世界から評価されている今があるのかも知れません。

そして、来場者の子供にサインをしてあげる微笑ましく温かい光景を見ながら、下田ひかりさんの地元であり制作拠点としておく「朝日村」という基盤は、本個展の開催地として最も相応しい場所のような想いを抱きながら会場を後にしました。

会場限定グッズの販売コーナー。図録はポストカードにもなる装丁でした。

概要

朝日村開村130年記念
死と再生のカタストロフィ 下田ひかり展
会期2018年7月7日[土]— 8月26日[日]会場朝日美術館
〒390-1104 長野県東筑摩郡朝日村古見1308
開館時間9:00–17:00[入館は16:30まで]休館日月曜日休館[7/16は開館、7/17は休館]入館料大人 800円 大学・高校生 500円 中学・小学生 200円
主催朝日美術館、朝日村教育委員会、朝日村
後援長野県、長野県教育委員会、SBC信越放送、NBS長野放送、
TSBテレビ信州、abn長野朝日放送、信濃毎日新聞社、
朝日新聞長野総局、読売新聞松本支局、中日新聞社、
市民タイムス、MGプレス
Asahi Village 130th anniversary commemoration
The Catastrophe of Death and Regeneration
Hikari Shimoda Exhibition
A session
July 7 [Sat] – August 26 [Sun] of 2018.
Venue
Asahi Art Museum
1308 Komi, Asahi Village, Nagano Prefecture 390-1104
Opening hours
9:00–17:00[Last entry time: until16:30]
Closed day
Mondays [* Exceptions:7/16 is open,7/17 is closed]
Admission fee
Adult :800 yen,
high school / college student :500 yen,
elementary and junior high school student :200 yen,
child nursery school child or less:free
Sponsorship
Asahi Art Museum, Asahi Village Board of Education, Asahi Village