【個展】竹久夢二「夢二繚乱」@東京ステーションギャラリー

竹久夢二

竹久夢二は「夢二式美人」と呼ばれる数多くの美人画を残している大正ロマンを代表する画家です。美人画だけでは無く、本の装丁デザインなども行うなど、商業的なデザインにも足跡を残された歴史的なアーティストという理解で良いかと思います。

今回開催された個展「夢二繚乱」は、千代田区と東京ステーションギャラリーの合同企画。500点以上にも登る展示作品の数もそうですが、印刷業が盛んで夢二自身の活動にも大きく関わった「千代田区」の印刷業にも触れることが出来る見応えある展覧会でした。

千代田区

 

千代田区は出版・印刷業が集積した全国有数の町として発展してきました。千代田区丸段南にある出版社・龍星閣は、高村幸太郎の『智恵子抄』の版元として知られていますが、戦後、竹久夢二の画集を次々と出版し、第二次夢二ブームを牽引した存在でもあります。
本展は、夢二の著作や、画集の出版のために創業者の澤田伊四郎が収集した膨大な夢二コレクションが千代田区に寄贈されたことを記念し、その精華を千代田区と東京ステーションギャラリーが共催で紹介します。

東京駅で逢いましょう

【展示構成】

展覧会は4章構成になっています。第1章では、夢二の若き日々を検証します。第2章では、出版や印刷・版画などを中心にした夢二の仕事を、第3章では、その中でも音楽や楽譜にまつわる仕事を取り上げ、第4章では、夢二の自伝小説『出帆』原画と、没後の龍星閣による出版活動などを紹介します。

第1章 夢二のはじまり

若かりし学生時代、夢二は新聞、雑誌に絵や詩を投書して糊口を凌いでいました。転機となったのは、明治38(1905)年6月に『中学世界』夏期増刊「青年傑作集」へ投書したコマ絵「筒井筒」の第一賞入選、そして明治42(1909)年の『夢二画集 春の巻』の刊行です。
本展では、早稲田実業学校に在学中に制作した肉筆の画文集『揺籃(ようらん)』を初公開し、若き日の夢二の姿を紹介すると同時に、初期の作例を通して、どのように画家として歩み始めたのか、夢二の原点に迫ります。

 

 

第2章 可愛いもの、美しいもの

大正3(1914)年10月、日本橋呉服町に「港屋絵草紙店」が開店します。夢二が正式に結婚した唯一の女性・岸たまきが主人を務めた港屋は、夢二がデザインした千代紙、便箋や封筒、半襟などを販売するブランドショップでした。また、恩地孝四郎や田中恭吉ら若い芸術家たちが集い、作品を発表できるギャラリーでもありました。
この時期には「夢二式美人」のスタイルが確立されただけでなく、絵葉書、雑誌の表紙や挿絵、本の装幀など、多方面にわたって夢二は活動を展開させていきました。自らの個展の開催にも意気込む一方で、鑑賞者や読者、女性や子どもの手に届く美術を提供し続けた夢二の幅広い画業を見ていきます。

見どころ② 夢二の全貌を感じる500点超の展示品

夢二の創作活動は、出版と深い関わりをもっていました。本展では、過去最大級の500点を超える展示品によって、夢二の多彩な活動をさまざまな角度からご紹介します。数多く出版された自身の画集をはじめ、装幀本、楽譜集、子どものための絵本、絵葉書や千代紙、半襟のデザイン、そして肉筆画に至るまで、竹久夢二の全貌を感じていただける展覧会です。

第3章 目で見る音楽

夢二は数多くの楽譜の表紙を描いています。代表的なのは、セノオ音楽出版社より発刊されたセノオ楽譜で、日本や世界各国の楽曲のイメージをさまざまなジャンルの要素を取り入れたデザインで表現しました。夢二は自ら作詞を手がけた「宵待草」のほか270点余りの楽譜で、いわばジャケットを任されています。また、夢二は童謡の楽譜にも積極的に参加しました。夢二が描いた大正時代の豊かな音楽の世界を紹介します。

第4章 出帆

昭和2(1927)年に都新聞で連載された『出帆(しゅっぱん)』は、夢二の半生を綴った自伝小説です。挿絵には、彼の愛した女性たちや彼女たちと訪れた風景、あるいは抽象的な心理描写などが水墨で描かれています。
『出帆』の連載後に海外へ旅立った夢二は、自ら新聞記事を切り抜いてまとめ、『出帆』の書籍化を友人らに託していました。夢二と交流した人々や龍星閣が尽力した夢二の著作や画集の刊行を通して、夢二を支え、見出し、繋いだ出版について再考します。

 

 

見終えた感想

写真撮影がNGの展覧会でしたので、詳細は現場で確かめて頂きたいと思いますが、非常に素晴らしい展示と構成でした。

筆者が特に関心を持ってみることが出来たのが「第3章 目で見る音楽」のコーナー。沢山の表紙デザインの作品はかなりの見応えがありました。商業的なデザインの領域に創作意欲を持って挑んでいた様子が伺えます。

また、「第4章 出帆」のコーナーでは、竹久夢二の年表を追いかけながら見ていくのですが、彼の人生の軌跡を女性遍歴を重ねながら、同時期の作品と一緒に見て行く面白さがありました。オススメの展覧会です。

概要

千代田区×東京ステーションギャラリー
夢二繚乱
会期 2018年5月19日~7月1日
会場 東京ステーションギャラリー
住所 東京都千代田区丸の内1-9-1

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電話 03-3212-2485
開館時間 10:00~18:00 (金~20:00)
休館日 月曜日 (6.25除く)
観覧料 一般900円、大学・高校生700円、中学生以下は無料