【映画】現代アートの巨匠・ゲルハルト・リヒターの半生を描く〜「ある画家の数奇な運命」

「ある画家の数奇な運命」

数々の著名な映画祭にノミネートされた、2018年のドイツ映画「ある画家の数奇な運命」を鑑賞しました。英題は「Never Look Away」です。

映画「ある画家の数奇な運命」※原題はNever Look Away

本作は、「善き人のためのソナタ」でアカデミー賞の外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督が巨匠ゲルハルト・リヒターに映画化を持ち込んで成立した企画です。

ゲルハルト・リヒター

1932年、ドイツ、ドレスデン(旧東ドイツ)生まれ。
ドレスデン芸術大学で絵画を学んだ後、61年に西ドイツに移住し、デュッセルドルフ芸術大学に入学。世界中の主要な美術館が彼の作品をコレクションするなど、名実ともに世界最高峰の評価を受け、最も影響力のある現代アーティストであり、日本では2005年に金沢21世紀美術館と川村記念美術館で回顧展を開催。2016年には瀬戸内海の豊島に、リヒター作品を恒久展示する日本初の施設がオープンした。

本作映画化におけるリヒターからの条件は、「モデルの人物名は変えること、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと」というミステリアスな契約。鑑賞者の想像力をかき立てる設定ですね。主人公とされるリヒター役の出演者の名前も「クルト」という架空の名称が使われています。

クルト・バーナード役のトム・シリング〜ゲルハルト・リヒターとされる主人公

エリザベト・マイ役(クルトの叔母)のザスキア・ローゼンダール

右:エリー・ゼーバント役(クルトの妻)のパウラ・ベーヤ

ストーリーの中盤から舞台はデュッセルドルフ芸術大学に移りますが、その中で演じられるさまざまな人物は、アート界にいる誰かをモデルにしていると色んな想像をしてしまいます。

史実の流れが忠実に再現されているのか?については、リヒターの狙い通り、鑑賞者に委ねられるかたちになります。私たちが自由に映画を解釈していくのが、本映画を楽しむ鑑賞方法のひとつかも知れません。
「この人物はヨーゼフ・ボイスだろう!」という分かりやすいキャラクターが登場する一方で、時代的にリヒターが対面するはずのない人物も現れているようです。

アントニウス・ファン・ヘルテン役のオリヴァー・マスッチ

ジャクソン・ポロックによる技法を真似るシーンも登場

本編では、新聞や雑誌の写真を大きくカンバスに描き写し、画面全体をぼかした手法でリヒターの代表シリーズ「フォト・ペインティング」が誕生するまでの絵画制作へ向き合うリヒターが描かれています。ラストでは個展の模様が再現され、作家リヒターの未来へ羽ばたいていく様子で締めくくられています。

以下の作品は、映画に登場する作品のモチーフになった作品の一部です。映画の中で綴られた作品に繋がるエピソードが事実なのか、そうでないのか?私たち鑑賞者自身が、美術鑑賞と同じように、それぞれの解釈で映画を受け止めて良いのかも知れませんね。

ゲルハルト・リヒター《Ema (Nude on a Staircase) 》 1966年〜公式サイトより

ゲルハルト・リヒター《Portrait Schmela 》 1964年〜公式サイトより

リヒターは個展開催の際、インタビューで「真実は全て美しい」と語っています。
鑑賞者自身が解釈する作品への受け止め方があり、自由に映画を鑑賞する楽しみに繋がるのが本作の1つの鑑賞方法かも知れません。それは美術鑑賞にも似ているようです。

ゲルハルト・リヒターの名作《Betty》 1964年〜公式サイトより

 

概要

「ある画家の数奇な運命」

公式サイト:neverlookaway-movie.jp

日本公開日:2020年10月2日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督・脚本・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
キャスト:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、 パウラ・ベーア、オリヴァー・マスッチ、ザスキア・ローゼンダール
撮影:キャレブ・デシャネル
音楽:マックス・リヒター
原題:WERK OHNE AUTOR 英題:NEVER LOOK AWAY
制作年:2018年
時間:189分
制作国:ドイツ/ドイツ語
日本語字幕:吉川美奈子
配給:キノフィルムズ・木下グループ
R-15指定

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